易占機考

六十四卦の字源[下 經]
上 經
 
■31番【咸】
  陰陽、男女が感応する象。
[形]●広く行き渡っているさま。あまねし。●なごむさま。心が同じさま。
[副]●すべて。みな。ことごとく。
[字の ナリタチ]みな。ことごとく。「口」「戌」から構成される。「戌」はことごとくの意。
 
■32番【恆】
  常久不変の立場をとる象。
[A][動 →]不変性。恒常的な精神。つね。
[動]●不変性を保つ。持続させる。
[形]●安定しているさま。維持して変わらないさま。●いつもの。普通の。一般的なさま。
[副]●つねに。(ア)常々。いつも(動作や事態が常に出現する意)。(イ)永遠に。いつまでも(ある事情が長期に持続する意)。
[B]●上弦の月がだんだんと満ちてゆく。●連続する。ひきつづく。わたる。●広く植える。あまねく種をまく。
[字の ナリタチ]常である。「心」から構成され、「舟」が「二(= 天と地)」の間にあって上下するようすから構成される。「心」は「舟」によって運ばれるので不変なのである。
 
■33番【遯】
  君子は退き、小人を遠ざけるをよしとする象。
[動]●のがれる。(ア)逃げる。(イ)隠居する。(ウ)避ける。 ●だます。あざむく。
[字の ナリタチ]逃げる。「走と似た字(= 行く)」「豚」から構成される。
 
■34番【大壯】
  陽が盛んで、君子の道が勝つ象。
【壯】
[名]●さかん。(ア)勇ましいさま。(イ)盛大なさま。●大きく立派なさま。●身体がじょうぶなさま。●(ものが)太くごついさま。●年若いさま(20歳未満を表す)。●すみやかなさま。はやい。
 
■35番【晉】
  日が地上に進み出る象。
[名]●周代の諸侯国。今の山西省の西部ほかにまたがっていた。●王朝名。(ア)西晋。(イ)東晋。(ウ)後晋。●今の山西省の別称。
[動]●すすむ。(ア)前進する。(イ)昇る。●(腰帯などに)挿す。はさむ。
[字の ナリタチ]進む。日が出て万物の生長が進展する。「日」「[至至](= いたる)」から構成される。「晋」とは「進」である。その地は北にあり、中原に事があるときは進んで南下するのである。また晋水を取って名とした。その川が迅進であるからである。
 
■36番【明夷】
  明晰さを隠して民衆に臨むと、かえって民衆のことが明らかになる象。
【夷】
[動]●損なわれる。傷つく。禍を受ける。やぶれる。やぶる。●たいらげる。(ア)平定する。(イ)(物を取りのぞいて)平らにする。(ウ)滅ぼす。皆殺しにする。●置く。安置する。つらねる。●両足を投げ出して座る(おごった態度を表す)。
[形]●たいらか。(ア)平坦なさま。(イ)安らかな。平安な。●おおきい。おおいなり。●にこやかなさま。たのしむさま。よろこぶ。
[名]●えびす。(ア)中国東部の異民族。(イ)中原以外の少数民族。(ウ)外国人。●仲間。同胞。ともがら。●農具の名。すきのたぐい。●道理。不変の法則。つね。のり。●けが。きず。
[助]文のリズムを整えることば。ただ。ここに。(文頭・文中に置き、実質的な意味はない)
[字の ナリタチ]平らである。「大(= 人)」「弓」から構成される。東方の人のことでもある。
 
■37番【家人】
  家庭内の秩序正しさが万事の根本であることの象。
[名]●一家の人。家族。●召使い。●婦女。●一般庶民の家。民間人。
 
■38番【睽】
  そむきあって通じない象。
[動]●目をそらす。反目する。そらす。睽違(= 互いに背をむける)。●分かれる。離れる。そむく。
[字の ナリタチ]目がすなおに順わないさま。「目」から構成され、「癸」が音。
 
■39番【蹇】
  山上に水があって困難なさまであり、君子が身をかえりみて徳を治める象。
[名]●足の不自由なロバ・やせ馬。
[形]●足の不自由なさま。あしなえ。●行動が鈍いさま。●困窮しているさま。とどこおったさま。●傲慢なさま。●どもりの。
[字の ナリタチ]あしなえ。「足」から構成され、「寒」の省略形が音。偃蹇(= 仮病)の「蹇」は跛蹇(= びっこをひく)。
「蹇蹇」●忠義を尽くすさま。●のろいさま。
 
■40番【解】
  困難や停滞が解消され、君子は罪過あるものを許す象。
[A][名]●カニ。
[動]気をゆるめる。おこたる。
[B][動]●とく。とける。(ア)切り開く。特に、動物の肢体を解体する。(イ)分解する。離ればなれになる。(ウ)引き離す。(エ)(結んだひもなどを)ほどく。(オ)服を脱ぐ。(カ)開き放つ。ひらく。(キ)解除する。とりのぞく。(ク)答える。釈明する。(ケ)理解する。はっきり分かる。さとる。●達する。●排泄する。●注解する。
[C][動]●上級官署に報告する。●おくる。(ア)護送する。(イ)選抜して送る。
[字の ナリタチ]わける。「刀」で「牛」「角」をわけるようすから構成される。一説に、解薦(カイセン の草冠なし)で、獣の名。

■41番【損】
  下を減らして上に加える象。
[動]●傷つける。いためる。こわれる。そこなう。そこねる。●減少する。へらす。へる。●喪失する。うしなう。●自分をおさえる。へりくだる。●悪口を言う。けなす。そしる。
[字の ナリタチ]減る。「手」から構成され、「員」が音。
 
■42番【益】
  上から減らし取って下に増し加える象。
[名]●利益。得。●優れた点。長所。
[動]●水があふれ出る。あふれる。●いっぱいにみなぎる。みちる。●ます。(ア)ふやす。増加する。加える。(イ)増し補う。補助する。(ウ)上回る。超越する。(エ)さらに一歩 進める。一層 深める。●利益をもたらす。有益である。役にたつ。
[形]●ゆたかな。
[字の ナリタチ]あり余る。「水」「皿(= 食器)」から構成され、「皿」からあふれる意。
 
■43番【夬】
  決断をするが、恩沢を施すこと相手も和らぎ受け入れられる象。
[動]●きっばりと決断する。さだめる。
[字の ナリタチ]分かれ決断される。「又(= 手)」から構成され、「 」は決断する形に象(カタド)る。「夬」は「決」。破壊決裂するものがあるのである。
 
■44番【姤】
  離れていたものが出会い象。
[名]●邪悪さ。よこしまなこと。●ねたみ。恨めしく思う気持ち。●きさき。
[動]●出会う。遭遇する。
[形]●りっぱなさま。よい。
[字の ナリタチ]対となるもの。「女」から構成され、「后」が音。
 
■45番【萃】
  正しい方法で人を集める象。
[名]●集まっている人や物。集まり。●補佐官。
[動]●あつまる。(ア)草が群れて生える。(イ)集合する。集める。●止まる。とどまる。●いたる。
[形]●苦しい。
[字の ナリタチ]草のようす。「艸」から構成され、「卒」が音。「瘁」の字音で発音する。
 
■46番【升】
  地中より木が生じ、向上するように、小さな蓄積を重ねて高大になる象。
[名]●容器を計る器。ます。
[動]●のぼる。(ア)低いところから高いところへ移る。のぼらせる。のぼす。(イ)(高所に)登る。(ウ)官職や地位があがる。(エ)乗る。●成熟する。みのる。
[字の ナリタチ](容器の単位で)十龠(ジュウヤク)。「斗(ヒシャク)」から構成され、象形でもある。官職で「升」は昇進。
 
■47番【困】
  沢に水がなく、困窮する象。
[名]●苦難。苦しみ。●とまどい。
[動]●窮地に陥って苦しむ。行きづまる。くるしむ。こまる。●苦難の窮地に追い込む。取り囲まれる。●極まる。尽きる。
[形]●苦しむ。(ア)疲れたさま。(イ)貧しい。貧乏な。
[字の ナリタチ]古い小屋。「木」が「口(カコイ)」の中にあるさまから構成される。
 
■48番【井】
  上に立つ者が民をねぎらい、助け合うようにすすめる象。
[名]●ヰ。(ア)大地を掘って水をくみ出す深い穴。井戸。(イ)井戸に似たもの。●井田。●郷里。集落。八家を一井とした。
[動]●[名 →]井戸から水をくむ。
[形]●すっきりと整ったさま。
[字の ナリタチ](井田制において)八家が一つの井戸を共同利用した。井げたの形に象(カタド)る。丼の・は水を汲む釣瓶の様子。むかし伯益がはじめて井戸を作った。「井」は「清」である。泉の清潔なものである。
「井井」●物事に筋道が立っていて、乱れないさま。井然。●清く静かなさま。
 
■49番【革】
  旧を改め、暦を制定して四季を明確にする象。
[A][名]●皮。(ア)毛を除いた獣の皮。(イ)人の皮膚。●皮製の防具。●兵卒。●八音の一つ。皮を張った楽器。太鼓の類。●たづな。
[動]変える。あらためる。あらたまる。●いましめる。●翼を広げる。
[B][形]●危うい。さし迫った。せまる。
[字の ナリタチ]獣の皮で、毛を取り去って、もとのようすを革更したもの。古文の「革の旧字」(= 更めるの意)の形に象(カタド)る。三十(= 廿と十)から構成される。三十年を一世として、世の中の道はあらたまる。「臼」が音である。
 
■50番【鼎】
  鼎で煮て聖人や賢者を養う象。また、新しいものを取り入れて変革する象。
[名]●かなえ。(ア)物を煮炊きする器具。(イ)犠牲を供える器具。(ウ)罪人を煮殺す器具。(エ)薬を煮る器具。(オ)国権を伝承する重要な器。(カ)香炉としして用いる器具。●三公(= 三人の重要な大臣)の位。●帝業。帝位。
[動]●[名 →]更新する。新しく改める。あらためる。
[形]●勢力が盛大で、時めいているさま。
[副]●ちょうど。まさに。
[字の ナリタチ]三つの足で両耳があり、五味を調和させる宝器である。【巽】の木を【離】の火の下に入れるのを【鼎】とするが、木を割って炊事するように象(カタド)る。ちゅう文は【鼎】を「貞(=占い問う)」字とする。
 ※ 【革】は旧来のものを除去することをいう。【鼎】はさらに新たにすること、新たなものを樹立すること。多く王朝の交替を指す。
「鼎鼎」●のびのびとゆるやかなさま。身体にしまりのないさま。●歳月がどんどん過ぎ去るさま。●盛んなさま。盛大なさま。

■51【震】
  雷を天の威嚇として身をつつしめば、その後に幸いがもたらされることの象。
[A][名]●かみなり。いかずち。●東。●威厳。いきおい。
[動]●ふるう。ふるえる。(ア)雷が落ちる。(イ)うごかす。ゆする。うごく。(ウ)地面がゆれる。(エ)おどす。おそれる。
[形]●はやい。●はげしい。盛んなさま。
[B][動]●妊娠する。はらむ。
[字の ナリタチ]霹靂(= かみなり)であり、万物を震動させるものである。「雨」から構成され、「辰」が音。かみなりの「震」は「戦」である。撃たれたところが忽ち破壊されて攻戦(= いくさ)のような案配である。
「震震」●雷・鼓・車馬など、激しくとどろく音の形容。●威勢の盛んなさま。●迅速なさま。●ぶるぶるふるえるさま。
 
■52【艮】
  止まるべきところに止まって、進まない象。
[名]●東北。●限界。限り。
[動]●とどまり静かにする。とどまる。
[字の ナリタチ]很(モトル)。「匕(ナラブ)」「目」から構成され、丁度 目で互いに匕して睨み、譲らない様子である。
 
■53番【漸】
  順序を追って少しずつ徳を蓄えつつ進む象。
[A][名]●事物の発端。きざし。いとぐち。●順序。次第。序列。
[動]●すすむ。(ア)少しずつ、しだいに進む。(イ)(病気が)重くなる。●流れを通す。みちびく。
[副]●しだいに。ようやく。
[B]●流入する。そそぐ。●ひたす。ひたる。●だます。いつわる。
[字の ナリタチ]川の名。「水」から構成され、「斬」が音。
「漸漸」●穂の出そろったようす。●涙の流れるさま。
 
■54番【歸妹】
  正しくない結婚は結局 破綻することを示す象。
【歸】
[A][動]●嫁にいく。とつぐ。●かえる。(ア)婦女が離婚して家に帰る。(イ)家や故郷に戻る。●かえす。(ア)もとの持ち主にかえす。(イ)もといた場所に戻す。●帰属する。つき従う。●一か所に集まる。●自首する。●(本来 帰りつくところに戻る意で)死去する。死ぬ。
[名]●帰省する点。結果。
[B][動]●贈与する。おくる。
[形]●恥じ入ったさま。
[字の ナリタチ]娘が嫁入りする。「止(= ゆく)」と「帰(= つま)」の省略形とから構成され、「師の偏」が音。
【妹】
[名]●年下の姉妹。いもうと。●親類やかかわりをもつ同年か年下の女子に対する呼び方。
[字の ナリタチ]女で弟にあたるもの。「女」から構成され、「未」が音。
[日本語用法]「いも」男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語。上代の語。
 
■55番【豊】
  盛大で明るい状況の下で行動し、この明るさをもって訴えを定める象。
[名]●酒器を受ける盤。
[形]●ゆたか。(ア)盛んに茂っているさま、(イ)生活が裕福なさま。充実したさま。●太っているさま。
[動]●[形 →]裕福にする。
[字の ナリタチ]「豆(= たかつき)」がいつぱいに満たされているもの。「豆」から構成され、象形。
 
■56番【旅】
  特定の所にとどまることなく、旅にさすらう象。
[名]●軍隊の編成単位。500人。●軍隊。●群衆。ともがら。●順序。●背骨。
[動]●外に出て客人となる。(ア)旅客。(イ)旅行。たび。●よそに身を寄せる。●自生する。穀物などが植えないのに野生する。●つらねる。ならぶ。●祭る。
[字の ナリタチ]軍隊の 500 人編成を旅とする。「旅(化なし/= 旗のひるがえり)」「从」から構成され、「从」はー緒にしたがう意。
 
■57【巽】
  従順に道理にしたがうことで、対象にどこまでも入りこめる象。
[名]●東南。
[動]●ゆずる。
[形]●うやうやしく従順なさま。
[字の ナリタチ]具わる。「兀(= 机)」から構成され、「[巳巳]」が音。易の「巽」は「散」である。物がみな生まれて散りひろがるのである。
 
■58【兌】
  身の行いを正しく保つと物事が順調にゆく象。
[A][名]●西。●穴(おもに、目・耳・口・鼻孔)
[動]●交換する。かえる。●まっすぐに通る。とおる。●愉快に思う。よろこぶ。
[形]●まっすぐに通っているさま。
[B][形]●とがっているさま。するどい。
[字の ナリタチ]よろこぷ。「儿(= 人)」から構成され、「沿のさんずいなし」が音。「兌」は「悦」。物が備足を得てみな喜悦するのである。
 
■59番【渙】
  風が水上に吹きつけて水が散ることから。離散の象。
[動]●氷がゆるみ、とける。散ずる。ちらばる。ちる。
[形]●あきらかなさま。美しくつややかなさま。
[字の ナリタチ]流れが分散する。「水」から構成され、「奐」が音。
 
■60番【節】
  節制して、正しい徳が行われるようにする象。
[名]●ふし。(ア)竹や樹木のふし。(イ)骨の関節。●文章の段落。●事件。事態。●事の一端。●季節。節季。●朝廷が使臣に持たせた証拠。●基準。尺度。のり。●節度。常軌。ほど。●礼節。礼儀。●みさお。(ア)節操。節義。(イ)貞操。●めぐりあわせ。●・・・。
[動]●省く。減らす。●取り締まる。管理する。●削る。
[形]●倹約した様。質素な。●高く険しい。
[字の ナリタチ]竹のくびれたふし。「竹」から構成され、「即」が音。●関節の「節」は限節(= ふし)があるのである。

■61番【中孚】
  心に誠信さを保ち、訴えを正しく判断する象。
【孚】
[A][名]●誠意。まこと。
[動]●信服する。まこととす。
[B][動]●孵化する。はぐくむ。
[字の ナリタチ]卵がかえる。「爪(= 鳥は卵を抱きながら爪で回転させる)」「子」から構成される。一説に、まこと、という。
 
■62番【小過】
  恭しさ、かなしみ、倹約などにあっては、やや行き過ぎることがあってもよろしきを得ることの象。
【過】→【大過
 
■63番【旣濟】
  物事の完成のときの災を考えて、あらかじめ防ぐ意。
[名]●すでに濟んだこと。
【濟】
[動]●川を渡る。わたる。●密入(出)国する。こっそり通す。とおる。●援助する。すくう。●利用する。もちいる。●成功する。しあげる。なる。なす。●増える。増やす。ます。●停止する。やむ。
[名]川の渡し場。わたし。
[字の ナリタチ]川(の名)。「水」から構成され、「齊」が音。
[日本語用法]すむ。すます。完了する(−させる)。解決する。
「濟濟」●数の多いさま。●きちんとして美しいさま。●おごそかで、うやうやしいさま。
 
■64番【未濟】
  物事がまだ完成しない象。
[名]●物事の処理や決定がまだすんでいないさま。
【濟】→【旣濟】



小 成 卦 の 語 源
 
●字の成り立ちについては上の「大成卦の語意」に。
*     *     *

■1【乾】
 「天」を象徴。また、「父」あるいは「君主」、性質としては「健(= すこやか)」、男性、積極性、体では「首」を象徴。

■2【坤】
 「地」を象徴、また、「母」または「臣下」、性質としては「順(= すなお)」、女性、消極性、体では「腹」を象徴。

■29【坎】
 「水」を象徴。また、性質としては「陥(= おちいる)」、体では「耳」を象徴。

■30【離】
 「火」を象徴。また、性質としては「麗(ツ)く(= 附着する)」「明るい」、体では「目」を象徴。

■51【震】
 「雷」を象徴。また、性質としては「動」、体では「足」を象徴。

■52【艮】
 「山」を象徴。また、性質としては「止(= とどまる)」、体では「手」を象徴。

■57【巽】
 「風」を象徴。また、性質としては「入(= はいる)」、体では「股」を象徴。

■58【兌】
 「沢」を象徴。また、性質としては「悦(= よろこぶ)」、体では「口」を象徴。

上 經


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