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●情報の整理を兼ねて、易学・占筮に関する有用な文献を纏めています。 | |||
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存命する易占の大家の一人、横井 伯典 氏が32歳の時に出版された判断研究の本。 卦ごとに占筮においての解釈と占事分野ごとの占断を纏めた高価な4冊ものの「周易講義」が有名だが、それから辞の解釈の部分を除いて、各占事分野に沿った占断法を加えたような内容。これには別に第二部ほかがあるようだ。 すでに絶版で、横井 氏の手元にも在庫がないという。
例えば、病占や勝負占では通り一遍に読むとまるで誤占するが、“横井占”は実占の立場から占事・占的の分野ごとに占断のやり方を追求し、提示している点が出色。これは占考論の重要なテーマで、占断はそうでなくてはならない。その横井 氏のやり方も、目新しい占法を提示するというよりは、生卦を含めた道具立ての選択にある。例えば、「恋愛」・「結婚」の占であれば、一に応爻の有無、二に比爻の有無、三に卦徳・・・の順で判断のポイントとしたり、横井 氏オリジナルの変為生卦(= 内卦の任意の1爻の陰陽を逆にして考える)を試みるとか。「失せ物」の占では、【離】の内卦・外卦・包卦になっている場合の見方を示したり(理屈はそうだろうが、なかなか・・・)。「就職の見方」では、対人関係の要素が多分にあると思われるのに、卦象判断をせずに経・伝の辞に拠るとか。 それから、占的の定め方と筮前の審事について細かく繰り返し説いている。例えば、「待ち人」では、お店の場合、占的を「忙しいように」と「客が来るように」と「儲かるように」としたのでは卦の見方も判断も異なる、と納得できる方法論を説く。 その他、「事業判断」はやりつけていて的中率が高いとのことで、後半1/3の紙面を割いており、卦の読み方が示唆に富んでいて面白い。 それと、錯卦を原因とか過去だとしている点は奇しくもこちらがゼロから辿り着いた概念と同じで、ここを初めて読んだ時には合点したもの。日々の勉強と発想と経験で真摯に求めた真偽や結論はそう変わりない。 残念なことは、筮法については全く触れられていないので、筮法に関わる読み方は示されていない。 尚、この後に書かれた「周易講義」(1976/ 8)では「運勢」、「健康」、「病気」、「金策」、「移転」、「利益」、「作柄」、「不慮(思いがけない出来事)」も扱っている。 この本は通しでも読めるし、若き横井 氏の試行錯誤の姿も分かってまた面白い。 横井 伯典 氏は 1970 年代にはテレビのお昼のワイド ショーにレギュラーでお出になっていた著名人で、現在も東京の築地で後進の指導に当たられている。方位学その他の本も出されている。その内、季刊誌「履 苑」に連載する64卦の要諦を一冊に纏めた本の出版されるのではないかな。 |
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紀藤 元之介 氏は加藤 大岳 氏の高弟で、関西易占界の重鎮。月刊「実占研究」を運営するなど後進の指導に当たられた。インパール帰還兵で、春日大社の神易所の所長も務めている。この本では紀藤 氏が考案した異色の四遍筮法(正式には、元之筮法)が紹介されている。
変の爻数で見ると、中筮法だと、最も出やすい一爻変と最も出にくい皆変の出方の差が 1,458 倍になるのに対して、四遍筮法では之卦へのパターンが20通りある三爻変と1通りしかない不変・皆変の出方の差は僅か20倍に留まる。一爻変がむしろ出難いというのは従来の本卦と之卦の関係性において最も異なる点。 また、本筮法・中筮法では変の爻位と数に変化を察しもするが、この筮法では多爻変が普通であるため、通常の占事で用いることがはたして適当なのか、の問題が提起されるだろう。 本編は64卦について卦ごとに判断のポイントを数行 纏めてあるだけで、爻は扱っていない。 この本の“買い”は八卦が他の八卦に変化する56通りの意味を整理した「増補・卦変観象総覧」だろう。それぞれ「卦勢」・「変化」・「動静」・「事象」・「人体」・「其他」の項目に分けて計51ページを割いて解説しており、管見だが他書には見られない。 また、八卦の取象に20ページを使っており、卦ごとの成卦主も纏めている(p.44-45)。 本の構成は、易の概要、占筮の基本事項、「説卦傳」と八卦の取象、64卦の大要、元之筮法、増補・卦変観象総覧、エッセー、読卦要領、占例。 |
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それ以前の「易学実義」全2巻の内、64卦の辞・爻の辞と判断の部分のみを一冊にしたもの。断易などの影響で江戸時代に生まれた即時占、つまり、爻を引くおみくじ占の判断帳のような体裁になっている。易学・占筮についての基本事項などは一切 書かれていない。
逆に、64の卦としての判断・解説などは一切ない。八卦についての記述も全くない。爻についても判断の根拠的な内容は特に書かれていない。全くの判断帳。 但し、「判断篇」の名の通り、判断の文言は割とハッキリしている。非常に平易な書き方で、比較的 前向きの判断なので、手が伸びやすいかも知れない。今では殆ど使っていないが。たまに【地雷復】の「運勢」の五爻のように記述が抜けているところも。一卦の扱いにつき5〜6ページほど。たまに文中に占例が挟まれている。 構成は、卦・・・辭・彖傳・象傳ともに原文+書き下し文。爻・・・辭・象傳ともに原文+書き下し文、項目ごとの判断。 易占を始めた頃、神田神保町の原書房で薦められたのがこれだった。カバーもない簡易印刷の冊子にこの値段というので躊躇ったもの。それで、自分の読めない占をメモして行って、開いて納得、購入と相成った。 中村 文聰 氏は東京の老舗のお菓子屋の家業をお捨てになってこの道へ。日本運命学会の看板を掲げ、四柱推命を専門にされて、「韋氏推命学講義」は日本における推命学の水準を上げた。ほか、気学・観相学など間口が広く、著書は 100 冊を越える。周易の師匠は加藤 大岳 氏。 |
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八卦・64卦についての象意をコンパクトにまとめた一冊。「易学小筌」とは江戸中期の易学者 新井 白蛾の名声を確かなものにした判断書で、その有名な「象意解」も使っていることから、新井のそれを相当程度コピーしたものではないかと考えられる。判断についてどの程度 松田 定象 氏のオリジナルかは判らない。
「象意解」とは、5【水天需】「密雲 雨 降らずの象、雪中 梅 綻(ホコロ)ぶの意」、14【火天大有】「窓を穿って明を開くの象、深谷 花を発(ヒラ)くの意」など、新井 白蛾が画象などから作った有名な辞。それを使って、卦を簡単に解説する。この辞の当否についてはまあそれぞれだが、今も高島易断などでは判断に使っている。 また、卦ごとに、こういう意、こういう意と卦面を並列し、「天時」・「希望」・「疾病」・「売買」ほかの項目で簡単な判断を提示する。 64卦の扱いはそれぞれ2ページ半。原文の掲載はない。 前段には占筮の基本事項が纏めてあり、筮法、八卦の象意の他、新井 白蛾の門人の谷川 龍山が称えた実際の判断上の「窮理」の6目がちょっとした“買い”。 巻末には、「易占余録の章」として、古い易者・漢学者や占い関係についての短い考察が続く。眞勢 中州の占例もある。 筆者は大正〜昭和期の大阪の人物で、九星気学ほか運命学全般を扱っていたようだが、詳細は不明。 また、そもそも「易学小筌」とは江戸易の草分け的存在である大易者 平澤 随貞の著作名であり、新井の易とされているものの多くも平澤 随貞に負っていることは否定できない。詳しく確認していないが、「象意解」も平澤の同書の「卦象解」から作ったもののようだ。「門人千人」とされる平澤の後、「易学小筌」と題する類似本が幾つも出ている。 |
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■「易学六十四卦象意秘伝」中村 文聡 著、初版 1955 ■「易占無限」高井 紅鳳 著、初版 1986? ■「熊崎易本義」熊崎 健翁 著、五聖閣 刊、初版 1933?、絶版 ★1881 ■「周易純束義」善2巻、長井 金風 著、八幡書店 刊、復刻版 1997/11 ■「易學講座」全4巻、柄澤 照覚 著、史籍出版 刊 ← 神誠館 刊、復刊版 1981/ 7 ← 初版 1920?、絶版 ↑■「易學大全」全2巻、柄澤 照覚 著、史籍出版 刊、復刻版 1980 ← 初版 1913、絶版 ■「周易講義」大島 中堂 著、絶版 ■「易学速成講義録」大島 中堂 著、絶版 |
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