易占機考

震災を被ったある家屋の問題
2013/ 4/ 4
 昭和39年に建てて、今度の東日本大震災の地震で大きなダメージを受けたお宅の建屋をどうするべきか、とのご相談を頂いた。今度で二度目の地震被災ということで、建屋は歪が見えるので、全面改修か新築をしたいけれども、90坪の大きな建屋で経済的負担が大きいし、どうしたらよいか・・・というご相談だった。メールでの易占鑑定。
 加えて、ご家族5人でお住まいとのことなので、それぞれご事情があるかも知れないし、どういうことが占的になるかな、と思ったら、この家屋の名義は依頼者のお父上で、改修・建て替えにはあまり前向きではないご様子。また、県からは「半壊」の判定を受けたが、財政問題から補助金は出そうにない、と依頼者は認識されている。
 そうすると、このご相談の解決のネックとなるのは、このお父上の考えと経済的負担のことになるかな、と理解した上で、占的をご希望に添って「建屋は当分 何とかもつか」として一筮した。
 以下、詳細に解いてみる。

 尚、この件は依頼者の許可を頂いており、更に問題点を掘り下げて、この先の答えとなるものをしっかり出してみよう、ということで加筮・加筆し、掲載とした。


占 題
 震災を被った建屋は当分 何とかもたせ得るか(4/ 3)

三 遍 筮 法
得 卦

52 艮爲山
伏卦 18 山風蠱
互卦 40 雷水解
錯卦 58 兌爲澤
綜卦 51 震爲雷
 六二、其の腓(コムラ)に艮(トド)まる。其[六二]の隨ふところ[九三]を拯(スク)はず。其[六二]の心 快からず。
 象に曰く、其[六二]の隨ふところ[九三]を拯はずとは、(九三が)未だ退くことを聽かざれば也。
 
 【艮爲山】、【艮】の“家”が二つ重なった卦でもって示されたので、家の引っ越しとか建て替えのことがすぐに浮かぶ。
 【山風蠱】|||(← 左を上に。以下 同じ)が伏していて、これはお父上の代でダメになってしまった家屋を再建しようとする状況にある。だから、現状のままでは宜しくない。ここ、ポイント。
 そして、六二は内卦の【艮】の一部であり、改修・建て替えをする前の家屋に関わる。そこが示されており、そして、この六二というのは自分だけでは動けない「腓」になぞらえていて、上の九三の「股」に従って動静進退を共にする。
 だが、三〜五爻の互体に【震】があり、九三はその主爻で、動くべきに動かなければならないのに、九三がどうしても動こうとしない。それで、九二は悩んでしまって、不快にある、ということが九三の爻辭・象傳に書かれている。九三とはお父上、或いは、補助金のことで言えば県行政当局。九二は依頼者、で好いだろう。
 錯卦【兌爲澤】||||を現在状況に観ると、内卦【兌】で依頼者が改修・建て替えの必要を説いても、お父上は外卦【兌】で明後日の方を向いている画。61【風澤中孚】||||の互いに向き合って話し合う形になっていない。
 つまり、この九三を中心に二〜四爻の互体に【坎】が出来ていて、これが今回の問題の要所に思える。
 以上、現在の様子をもって示されている。

 それで、今後の成り行きを測ると、この卦の六つの爻辭はどれも身体の部位をもって書かれていて、問題に思える九三は爻辭「其の限(コシ = 上身と下身との界限)に艮(トド)まる。其の夤(セシジ・セボネ = 連絡)を列く。q(アヤ)うきこと心を薫す」と、腰の部分に当たる。「夤を列く」と言うのだから、これは家屋のことに引き当てれば、柱なり壁なりが実際に強くきしんで来ていることを思わざるを得ないし、「危きこと心を薫す」で、心配が膨らんで来そうだ。年で言えば来年。
 そうして、一つ置いて、六五には「其の輔(ホ = 頬骨)に艮(トド)まる。言(ゲン = 言葉)に序(= 順序)有り。悔 亡ぶ」とあるので、依頼者が根気よく、順序立て改修・建て替えに努められれば、ここいらでやっとお父上の説得がなる様子。或いは、補助金のメドが着くか。この時の六五は外卦の【艮】の一部なので、実際の作業の段となりそうだ。
 この何をどうするの順序・段取りがこの占でも問題になる。
 そして、主爻の上九「艮まるに敦し」で改修・建て替えのゴタゴタが済み、一件落着、と。

 また、もし建屋のこの状態を放置しておくと、序卦は 53【風山漸】|||で、これはガクン・ガクンと地震なりの段階を踏んで状況が高じる意により、建屋の状況で考えれば宜しくない。
 或いは、やっぱり改修・建て替えはしない、という選択であれば、【艮爲山】の内卦【艮】を裏返して 41【山澤損】|||になり、家屋の価値を損じるとか、それに付随することでも、何かより損な状況になる、ということを考えることになる。

 ということで、23【山地剥】|や 28【澤風大過】||||といったやがて建屋が崩れ落ちそうな卦が示されたわけではないけれども、来年に当たる九三を陰変すればその【山地剥】になるし、先の通り九二を陰変すれば【山風蠱】で問題の立て直しの途にあること。そして、得卦が二つの【艮】で示されたことからすれば、やはりそう遠からず対応しないと宜しくない筈だし、部分的な改修では難しいように拝見する、と一旦お伝えした。

 すると、依頼者より連絡あり、建屋は風が吹くと揺れる程だとのことで、やはり【山地剥】の地面から建屋が剥がれ落ちるような状況も考えないといけなかった。
 それと、肝心なことで、今、お父上が建屋の改修・建て替えを承知されない理由・・・建屋のすぐ脇が交通量の多い通りで10年以上前から拡張計画があり、土地の明け渡し代金でこの問題を解決したいと考えている様子がある、とのこと。ただ、県行政の財政悪化と震災とで更に計画が先送りになってしまっているようだ。
 こうした占では家屋敷・土地・道路がしばしばセットになっているもので、合点。お父上の九三は三〜五爻の互体【震】の“道路・通り”の主爻を成していて、それが内卦【艮】の“ストップ”と重なっている。これにて問題点辺りのモヤモヤが解けた。
 建屋の改修・建て替えはこの道路拡張とのことで観るのが本筋らしい、と。新築をしても、道路拡張となれば、おそらく取り壊しになるだろうから(後記:依頼者より、道路拡張の対象になるのは庭の部分までで、建屋には掛かっていない、とのこと。それなら、生活に支障があれば、転居の選択になるのではないかな)。


占 題
 道路拡張まで何とか建屋をもたせ得るか(4/ 3)

三 遍 筮 法
得 卦

11 地天泰
伏卦 36 地火明夷
互卦 54 雷澤歸妹
錯卦 12 天地否
綜卦 12 天地否
 九二、荒を包み[→ 匏(ヒサゴ)を(浮き袋として)抱いて]、河を馮(カチワタ)るを用ひ、遐(トオ)きを遺(ワス)れず[→ 隤 = 墜つるに遐(イタ)らず]、朋 亡ぶれば(= 公平無私なれば)[朋 亡くなるに至らず]、中行[九五]に尚(ア)ふを得ん。
 象に曰く、荒を包み、中行[九五]に尚ふを得んとは、以て光 大なれば也。
 
 これは【泰】中の【泰】で、為すべきことが通る気運であることは言うまでもなくて、この九二というのは遠方に地所を得て移住・開墾云々の意味がある。実際には、他所に移らないケースでも、何かしら代替えが期待できるように思う。公益に与る象。
 こういうズバリの占が示されたからには、建屋の改修・建て替えは道路拡張のことと絡んで進められることになるだろう。
 すると、現実に考えて、ガタの来ている建屋については部分的な補強をするなどして何とか急場を凌ぐ。それから、土地・建物の明け渡しの契約を早く進めるべく、県なりにせっつく、と。そうした選択が要る。
 先の占で、【艮】の“家”が二つでもって示されたのはやはり立ち退き・建て替えの意味合い、と。

 さて、時期のことだが、これはよく努められれば、再来年以降は外卦【艮】の“新しい家”の方になるので、ここいらでまず見通しが立ちそうに思える。
 そして、次の六五では爻辭「帝乙[六五]妹[六四]を歸(トツ)がしむ。以て祉(サイワイ)ありて元吉」、象傳「以て祉ありて元吉とは、中にして以て願ひを行ふ也」で、改修・建て替えのメドが着くなり実際の工事となりそうだ。2016 年の前半から前後に半年ほど。
 その次の上六の爻辭は「城 隍(カラボリ)に復る」で、謂わば対象の土地が空っぽになる、と。
 この時期の数字関係は先の占とそのまま重なる。



占 題
 県の道路拡張事業は活きか(4/ 4)

三 遍 筮 法
得 卦

23 山地剥
伏卦 4 山水蒙
互卦 2 坤爲地
錯卦 43 澤天夬
綜卦 24 地雷復
 六二、牀(ショウ = 寝台・椅子)を剥ぐに辨(= 牀足と牀身の境目)を以てす。貞(タダ)しきを蔑(ホロ)ぼす。凶。
 象に曰く、牀を剥ぐに辨を以てすとは、未だ與(ク)みするもの[九五]有らざれば也。
 
 もしこの道路拡張の話が計画倒れだと、外卦がクルリと【倒艮】=【震】となって、62【雷山小過】||の互いに背を向け合う形になり、【大坎】、目論見は外れてしまう。
 ということで、裏取りに一筮した。

 【剥】はまさに立ち退き、或いは、県側が必要とするだけの土地の買い上げ、ということになる。
 この卦は遠い上九まで爻辭に剥がしたり貫いたりのことが書かれているので、この事業は動いていると観て好いだろう。計画が元に戻るの意の【地雷復】|の綜卦なので、計画が振り出しに戻ることはない。錯卦 43【澤天夬】|||||で、県は立ち退きなりに決着を着けてゆくだろう。

 時期のことだが、六二の今年なりは象傳「未だ與みするもの[九五]有らざる也」でまだダメ。
 こちらの一帯の立ち退きの具体的な有り様を承知していないので、辞との擦り合わせが出来ない。ただ、一番先の上九が「小人は廬(= 小さい家)を剥す(= 安んずる場所を失う)」となっていて、つまり、沿線では計画エリアが建屋に掛かるなり大きな障碍が出来るために他所へ転居となるような人もまた居る、ということで、この問題は心配ないだろう。


 易占鑑定もここまで回答を出すとスッキリする。のべ一日作業(笑)。首尾よく解決されることをお祈りします。



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